成年後見制度
高齢化社会を迎えた現在,判断能力が低下したご本人の財産を守る制度が「成年後見制度」です。
成年後見制度は,判断能力が低下したご本人が契約の当事者や相続人となる場合にも必要となります。
具体的には,ご本人が認知症で要介護5の状況の中,兄弟が亡くなり,ご本人が相続人の一人として遺産分割の当事者となる場合などが典型例です。
この場合,判断能力のないご本人が「遺産分割協議書」に署名押印しても,遺産分割協議は無効です。ご本人に「成年後見人」を選任してもらい,成年後見人がご本人の法定代理人として遺産分割協議を行うことになります。
「成年後見」のほか,判断能力の状況に応じて,「保佐」・「補助」の制度が利用されます。
成年後見の申立
成年後見制度を利用するためには,家庭裁判所に成年後見の申立てをしなければなりません。さいたまの家庭裁判所ですと,概ね以下のような手順となります。
(1)申立準備(成年後見申立書の作成,添付資料の収集)
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(2)家庭裁判所に申立て
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(3)調査 (家庭裁判所で参与員との面接など)
※ さいたまの家庭裁判所では面接前に20分ほど成年後見のビデオを鑑賞します。
※ ご本人の判断能力の調査のため,医師の鑑定が必要となる場合があります。
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(4)後見開始の審判・後見人の選任命令
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(5)後見登記
※ 東京法務局に後見登記がなされます。
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(6)後見人として活動開始
成年後見人に親族が選任される代表例
ご本人に資産はないものの,ご本人名義の銀行口座からの払い戻しなどに後見人の選任が必要となる場合
成年後見人に弁護士が選任される代表例
(1)ご本人が交通事故で重篤な状態に陥り,ご本人のために損害賠償請求などの裁判対応が必要となる場合
(2)ご本人を相続人の一人とする遺産分割が始まり,相続人間で紛争が発生する可能性がある場合
(3)親族後見人に横領等の不祥事が発覚し,ご本人の財産の回復を図る必要がある場合
(4)ご本人に対する親族の虐待が認められる場合
後見人候補者の希望
さいたまの家庭裁判所の扱いですと,申立て時に「後見人候補者」として申立人を含む親族や特定の弁護士を後見人に選任してもらうようお願いすることが可能です。
遺産分割や裁判など,ある程度法律的な対応が見込まれる場合に,信頼できる弁護士を候補者とすることが可能となります。
一方,①候補者がいないものの後見人として弁護士が相当である,②候補者として弁護士が相当だが,想定される後見業務の性質上,希望した候補者が何らかの理由により相当でないと判断される場合もあります。
この場合,さいたまの家庭裁判所の運用ですと,埼玉弁護士会を経由して同弁護士会所属の弁護士が成年後見人に選任されます。
成年後見の申立代理
大宮桜木町法律事務所に成年後見の申立て手続をご依頼いただきますと,弁護士が代理人として申立てに必要な書類の作成等をあなたの代理人として行います。
また,申立人であるご依頼者とともに,家庭裁判所の面接にも同行します。
成年後見の申立書の作成等は,申立てをされるご自身で作成することもできます。
しかし,申立てに至る経緯や財産目録の作成,戸籍の収集など専門家である弁護士の力を借りた方がよい場合が多いでしょう。
大宮桜木町法律事務所では,親族が後見人の候補者となることを想定している場合でも,申立代理人として対応することが可能です。
弁護士費用
原則として手数料20万円(税抜)以上。及び実費
※ いわゆる成功報酬はいただきません。
※ 実費の目安としては1~2万円。
成年後見支援信託制度
成年後見支援信託制度は,ご本人の財産のうち,日常的な支払をするのに必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し,通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する仕組みをいいます(家庭裁判所発行「後見制度において利用する信託の概要」から引用)。
さいたまの家庭裁判所の運用ですと,概ね1200万円以上の預貯金等がある場合に成年後見支援信託制度が利用されます。信託財産は元本が保証されます。後見人が管理する預貯金等は概ね200万円程度となります。
ここでのポイントは,この制度が家庭裁判所の職権(判断)で利用される点です。
今後,成年後見制度を利用される方は,ご本人のため後見が開始された場合に成年後見支援信託制度がとられる可能性も検討しなければなりません。
詳しくは大宮桜木町法律事務所までご相談下さい。