調停と裁判の関係ですが,離婚事件は調停前置主義がとられており,調停を経ずに訴訟を提起することはできません。そこで,まず調停についてみていきます。

調停は,原則として男女の調停委員がペアとなり,当事者双方の意見を別々に聞く形で進行していきます。

調停の回数に制限はなく,合意の見込みがないと判断された場合に調停は不成立となります。

調停委員は裁判官ではありません。学識のある民間人であったり,弁護士であったりと様々なバックグランドを持つ方が担当します。

裁判官(正確には審判官)はたくさんの事件を抱えていますので,裁判官が毎回調停に立ち会うことはありません。

それでも,調停が重要な局面になると「評議」が行われ,裁判官と調停委員が別室で協議することがあります。

このように,調停では裁判官が全面に出てきませんので,調停委員の個性や進め方,考え方が大きく影響することになります。

たとえば,調停委員が間に入ることで柔軟な解決が可能となることもありますし,反対に,調停委員が当事者の意見に流され,争点が不明確になり,解決に向けた進展が図れないケースもあります。

この点,財産分与は様々な法律上の論点があり,複雑な案件によっては調停を維持するよりも訴訟の場で争った方が相当なケースもあります。

その場合,代理人の弁護士としては,調停を不成立にしてほしい旨意見を述べることもあります。

結局,財産分与が調停,訴訟のどちらに馴染むかは一概にはいえず,調停でこちらの主張がどの程度認められそうか,どのような法律上の争点があるか,それに対する調停委員の理解はどの程度かなど様々な側面から検討していくことになります。