離婚を求められたときの対応

まずはよく考えることから始めます

ある日、妻(夫)から離婚を求められた。

突然のことに混乱してしまうのが普通です。
一方で、切り出す側は自分でタイミングを見計らうことができますので、入念な準備をした上で切り出していると思った方がよいでしょう。
こうした状態のまま離婚についての話し合いを進めてしまうと相手の言われるがままになってしまう可能性が高いと言えます。
相手から結論を急かされているような場合はより注意が必要です。知恵をつけさせたくないという隠れた意図がある場合もあります。
結論を急かされているときほどよく考える必要があります。
混乱したまま不利な条件を認めてしまったりすることがないように、また、法律的な観点からするとどうなのかなど、まずは弁護士に相談することをお考えください。

離婚に応じるか、応じないか

離婚に応じる、応じない、条件次第では応じてもいいなど方針は色々とあり得るところです。

離婚をせず、やり直したいが2人だけで話し合いをするのは難しいという場合には、家庭裁判所で、離婚ではなく、夫婦関係について円満解決を求める調停を申し立てるという方法もあります。

結論的には離婚に応じる場合でも、どの段階で応じるのか、財産分与等の他の部分の条件も含めて総合的に考えて対応していく必要があります。
その中では、離婚に応じること自体が交渉材料のひとつとなることもあります。

離婚に応じるにしても、
 過大な財産分与を認めていないか、
 慰謝料などを支払う理由があるのか、
などをよく確認しなければなりません。

離婚に付随する問題

 離婚に関する問題は、離婚をするかしないかだけ決めれば決着するものではありません。
 後述するように、親権、財産分与、慰謝料や養育費など、離婚に付随する問題があり、実際には離婚自体よりも、これらの問題が主戦場となることの方が多いと言えます。

 離婚を求める側は、とりあえず何でも請求するということがあるかもしれませんが、離婚を求められている側は、親権や財産分与などの問題への対応は慎重に考える必要があります。
 というのも、これらの問題は、離婚する場合にのみ生じてくることですので、下手に回答してしまうと、離婚に応じるものとされかねません。
 離婚に応じないという方針であれば、財産分与などそもそも問題とならないという態度をとる必要があります。
 とはいえ、財産分与などの条件によっては離婚に応じてもよいといった方針もあり得るところですので、対応は戦略的に考える必要があります。

親権

 親権は、別れた夫婦間の子どもが未成年であったときに、父母のどちらが養育者になるかを決める問題です。
 未成年の子どもがいる場合、離婚する際に必ず親権者を決めなければいけません。先に離婚をして、後で親権者を決めるということはできません。
 そのため、離婚することについては合意できても、どちらが子どもの親権をとるかで合意できずに離婚裁判に至ることはよくあります。

 離婚裁判になり、裁判の場でも最後まで合意ができなければ、判決が出され、裁判所により親権者が決められます。
 裁判所は、子どもにとってどちらの親に育てられたほうがよいかという「子の福祉」の観点から判断をします。
 あくまで問題となるのは子どもの幸せであり、離婚の原因が夫にあるか妻にあるかということは直接には問題になりません。
 子どもの幸福の観点から、自身の有利な事情をしっかりと裁判所に聞いてもらうことが大事です。

財産分与

 財産分与は、簡単に言うと、結婚している間に築いた財産から借金を引いた金額、つまり、正味のプラスの財産を原則として半分ずつになるように分けるものです。
 分けるにしても、財産分与の対象に含まれる財産、含まれない財産があり、不動産などはいくらとして評価するかという問題もあります。
 半々にするためには、多く持っている方が少ない方に分与する形になります。多くの場合は、資産の多くは夫名義となっていることから、夫が妻に分与することになりますが、もし妻により多くの資産がある場合は、妻から夫に分与することになります。
 男性(夫)だから女性(妻)に分与する、というわけではないことには注意してください。

 財産分与を求めるのは、離婚を求める側とは限りません。
 離婚を求められた側から財産分与の請求することも可能です。ただし、離婚することが財産分与の前提ですので、その請求は、離婚に応じるのだととられかねないので注意が必要です。

慰謝料

 離婚と一緒に慰謝料の支払いを求められる場合は多くあります。
 そうでなくても、協議離婚に応じてくれれば慰謝料請求しないからなどと交渉材料に使われることもあります。
 しかし、そもそも慰謝料を支払わなくてはいけない状況なのかはよく考える必要があります。
 よくある誤解が、男性(夫)だから女性(妻)に慰謝料を支払う義務があるというものです。
 これは根本的に間違っています。
 例えば、妻が浮気をしたことが原因で離婚をするということであれば、夫側から妻側に対して慰謝料請求をするのが通常です。
 そうした例から分かるように、慰謝料というのは、男か女かではなく、離婚原因を作った側、簡単に言えば、悪い側が支払うというものです。
 結婚生活というものは、お互い相手にそれなりに不満があってもやっていくものであり、客観的に見て、一方が悪いとなかなか言えるものではありません。
 離婚原因が純粋な性格の不一致ということであれば、むしろ原則として慰謝料は発生しません。
 とはいえ、裁判などになれば、やはり一方が悪いとされることもあります。
 慰謝料の支払いを求められ、それに対して返事をする前には、必ず法律相談を受けることをお勧めします。

 インターネットでは、非常に高額な慰謝料をもらったなどと書かれたものを見ることがありますが、財産分与と混同しているように思えるものもありますので、鵜呑みにしないように注意が必要です。

養育費

 未成年の子どもに対する養育費は、親権者でない側が、現に養育している親権者側に支払います。

 養育費は、お互いの収入を表に当てはめて金額が算出されることが一般的です。
 良くも悪くも機械的に算出されることが通常です。
 個別の事情について加味されることはありますが、それも表から算出される金額をどう調整するかという考え方をされることが多いため、大幅には変わりにくいと言えます。

 養育費の支払いを求められている場合、求める側が自分たちの生活に必要な金額を算定して要求してくることもあります。
 法律的には何を基準にどう考えるかを分からないままに聞くと、そういうものかと思ってしまうこともあるかもしれません。
 しかし、求められている金額が適正かどうかについてはよく検討しなければなりません。

 また、支払う側としては、養育費に対する考え方を決めておくことは重要です。
 ひとつの考え方としては、負担を減らすためにできるだけ金額を低くしたいというものです。
 支払わない、支払いたくないという主張は通用するものではありませんが、義務を果たすにしろ、その負担が少ない方がいいと考えるのは自然なことです。
求められている金額が過大でないかよく検討すべきです。

 もうひとつは、子どもに対してより配慮したいと考える場合です。
 例えば、毎月の養育費を多めに払うような余裕はないが、進学などの進路に関して不自由しないようにしてあげたいといったこともあるかと思います。
 そうした際には、毎月の支払いとは別に、進学の際には協力する旨の条項を置くこともあります。
 養育費は、基本的には毎月一定額を支払うというものですが、バリエーションは様々なものがあります。
 養育費は、一度取り決めると、基本的には子どもが成人になるまでその内容での支払いが続きます。
 内容が過大でないか、また、必要なところをフォローできているかなど、安易に応じてしまう前によく考える必要があります。

年金分割

 年金分割には以下のような特徴があります。
1 年金額を分けるわけではありません。
 例えば、夫が月6万円もらえるところ、分割することでその半分の3万円をもらえるようになるといった単純な仕組みではありません。
2 国民年金にしか加入していない場合は対象外。
 厚生年金などに加入していた場合に、加入していた期間しか年金分割の対象とはなりません。自営業で国民年金にしか加入していなかったといった場合は、意味がありませんので年金分割はできません。
3 分割の対象となるのは結婚していた期間の分だけです。
 例えば、厚生年金に30年間加入していたとしても、結婚していた期間はそのうちの15年間だった場合は、分割の対象となるのは結婚していた15年間分だけです。
4 総額を2分の1にします。
 共働きで、夫婦ともに厚生年金に加入していたような場合、年金分割は、両者の持分を足して2で割るような形になります。
 この場合、年収が低い方に分割をするメリットがあります。