借金額が大きい場合(ケース①)

個人の方が破産の申立てをする場合、その手続は、同時廃止手続か管財手続かに振り分けられることになります。管財手続がとられば場合、お願いした弁護士とは別に、裁判所が破産管財人を選任します。
振り分けの目安は、①換価すべき財産があるか否か、②免責に問題があるか否かとなります。

前者について、さいたま地方裁判所など埼玉県内の裁判所では、20万円以上の財産があるか否かという定型的な基準が設けられています(特に前者は詳細な基準がありますが、ここでは割愛します。)。

一方、借金の大半がギャンブルである場合、2度目の破産申立てなど免責に問題がある方は、資産がなくても、免責調査型として管財手続が選択される場合があります。

ご依頼者の立場からみて、同時廃止手続と管財手続の違いとしては、破産管財人が選任され、20万円の予納(原則)が必要となるか否かでしょう。
20万円は、破産財団として最低限必要な費用となります(引継用納金といいます。)

一方、同時廃止手続では、管財人は選任されません。したがって、20万円の予納も必要ありません。

このように、費用的な面で大きな違いがあるわけですが、同時廃止手続か管財手続か微妙なケースがあります。

その一つに、借金の額が大きい場合が挙げられます。
たとえば、資産がなく、免責させても問題ないような方ではあるが、借金が数千万円にものぼる場合(借り入れについては、裁判で判決が確定している。)、同時廃止手続として処理されるでしょうか(時効は完成していないことが前提です。)。

この点について、借金の額が大きいから自動的に管財手続が選択されるということはないというのが答えとなります。
たとえば、破産を含む借金の整理に踏ん切りがつかず、長年借金の滞納を続けてしまった結果、元金の数倍以上も借金が積み重なるケースも見受けられます。
これ自体決して好ましいことではありませんが、そのような場合でも、他に大きな問題がなければ、同時廃止手続で処理されるケースもあり得ます。

もっとも、一般的に負債が数千万以上ある方については、現在または過去に事業をされていたり、借金の負い方に問題がある方、それなりの資産をお持ちの方(持っていたが、現在はなく、その調査が必要となる方)が多く、管財手続となる可能性も十分に考えられるところです。

結論として、借金の額が大きい方については、弁護士が、借金を負うことになった原因、内容をよく聞き取り、同時廃止手続で処理される見込みの有無を見極めることになります。可能性がある場合は、同時廃止を相当とする上申書を提出することもあります。

2度目の破産の場合(ケース②)

たとえば、破産法は「免責決定確定の日から7年以内に免責許可の申立てがあったこと」を、免責不許可事由としています(破産法252条第1項10号のイ)。

つまり、前回の免責決定を得てから7年間は、2度目の破産申し立てをすることが原則許されません。逆を言えば、7年を過ぎた後に、再度借金を負って破産申し立てをすることは可能です(買い物依存症に陥った方など)。

このような2度目の破産申立ての場合、原則として管財手続がとられ、破産管財人による免責調査が行われることになります。したがって、引継予納金20万円が必要となります。

もっとも、2度目の破産申立ての場合であっても、例外的に同時廃止手続がとられるケースもあります。

2度目の破産申立てについては、裁判所は、主に債権者の視点に立って、同時廃止手続、すなわち管財人をつけずに破産手続を終了させてよいか審理することになります。

具体的な判断基準ですが、これまでの経験からして、①前回の免責決定からどの程度期間が空いているか、②前回の借金と今回の借金が同じ原因によって生じたものか、③今回の借金の額、債権者数、④破産する方の現在の生活状況、⑤借金の原因を断絶させる方法の有無が重視されるものと思われます。

いずれにしても、2度目の破産申立てのご依頼を受けた申立代理人は、原則として管財手続がとられることをご依頼者に説明した上で、裁判所に対し、どうして同時廃止手続が相当か、上申書などにより丁寧に説明を行うことが必要となるでしょう。