建物所有目的の土地の賃貸借や建物の賃貸借において、地代や家賃が高すぎる、低すぎるという争いが生じることがあります。

借り手も貸し手も一度合意した地代等に契約が終わるまで拘束されるのでしょうか(もちろん当事者間で協議ができることはいうまでもありません。)。

いいかえると、協議が不調に終わった場合、不満のある当事者は、何か法的な手続をとることができないでしょうか。

本来、賃料を含む契約内容は当事者間で自由に設定でき、契約(合意)したからには、約束は守らなければならないのが原則です。

しかし、たとえば、建物所有目的の借地契約は、借地借家法が適用され、期間が原則30年となるなど、長期に及びます。
加えて、借地借家法は、借地権など借り手を強く保護しており、貸し手の立場からすると、特段の事情等がなければ、一度合意すると不動産は半永久的に戻ってこなくなるといっても言い過ぎではありません。

その間に、経済事情の変動や、相続による当事者の交代など、契約設定時の状況が大きく変化することがあります。
それにもかかわらず、一度設定した契約(合意)内容に拘束され続けることは、かえって不公平となることがあります。

そこで、借地借家法は、第11条で地代の増減額請求について、第32条で建物の借賃の増減額請求について規定を設けています。

借地借家法11条及び32条は、地代増額請求などを権利として規定しております。地代増額請求権等は、法律的に形成権と呼ばれております。

その意味は、相手が承諾するとしないとにかかわらず、増額等の意思表示がなされたときに、地代等を増額(減額)するという法律効果を発生させることになります。

もちろん、増額請求等が認められるためには、一定の要件を満たすことが必要となります。また、増額等の額も、客観的に「相当」な額でなければなりません。

なお、一度合意した金額の変更に関する争いとして、養育費の増減額請求を挙げることができます。しかし、地代等の増減額請求とは権利の性質も手続きも異なります。

すなわち、養育費の増減額は、一定の要件を満たすことを前提に一方的な意思表示によって権利を実現させる形成権ではありません。手続についても、養育費増減額の調停を申立てて合意するか、審判で一定の判断を受けることになります。