勤務先から損害賠償請求

近年、従業員が、勤務会社を相手に残業代の請求をしたり、解雇を争ったりする紛争が多くみられます。

一方で、従業員が会社から損害賠償の請求を受けることもあります。

たとえば、会社が従業員の不法行為について使用者責任を負った際に、会社が従業員を相手に求償権を行使する場合や、会社自体が従業員の不法行為により損害を受けた場合です。

前者で典型的なのは、従業員が仕事中に交通事故を起こして第三者に損害を与えた場合です。後者で典型的なのは、従業員が勤務中の居眠りにより高価な機械を損傷した場合です。

ところで、民法上、使用者(従業員を雇用する会社)は、被用者(従業員)が事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する義務があるとされ、これを使用者責任といいます。

そして、民法上、使用者責任を負担した使用者は、不法行為を行った被用者に対し、求償権を行使することができるとされています。

それでは、自ら不法行為を行ってしまった従業員は、会社に対し、全責任を負わなければならないのでしょうか。特に、会社は、当該従業員の退職後に請求を行うことがあります。

求償権の制限

この点について、最高裁は、「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度の他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度に」求償権の行使が制限されるとしています。

簡単にいうと、上記要素を個別具体的に考慮し、損害の公平な分担という観点から求償権の行使を制限しようとする理論です。

裁判例の中では、会社からの求償権の行使を全損害の20パーセントに制限したケースもあります。

勤務先会社から損害賠償請求を起こされた場合、あわてずに弁護士に相談することをおすすめします。