転勤命令

遠隔地への転勤を命じられて、単身赴任になるとき、従うべきか、拒否できないかなど、悩まれることがあると思います。
また、単身赴任までいかなくても、さまざまな事情で転勤を受け入れがたい場合もあるでしょう。
自身のキャリアアップのためになるなど、積極的に転勤を了解できる場合はあまり問題にならないでしょうが、家庭の事情などで転勤できない場合もあります。

転勤命令の有効性について、法的にはどうなのでしょうか。

まず、労働契約に転勤命令の根拠がない場合、転勤命令権の範囲を超えた場合、法令違反になる場合は、当該命令は無効になります。

それらをクリアしている場合でも、転勤命令は、権利濫用になると無効です。

どのような場合に無効となるか

問題は、どのような場合に権利濫用にあたるかです。

最高裁判所が昭和61年に出した判決では、
①業務上の必要性があるか
②業務上の必要性がある場合でも、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたか、もしくは当該転勤命令が労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるか
③特段の事情があるか
といった基準で判断をしました。

その後、いくつもの下級審裁判例も出ていて、中には、家庭の状態や、労働者の体調などを根拠に転勤命令を無効にしたものもあります。

しかしながら、最高裁判所や、その後の下級審裁判例の考え方を押さえても、転勤命令の有効性に関し、一刀両断に結論が出せるものではありません。

結局は、具体的な事情に即して、労働法の趣旨や裁判所の考え方などに照らしつつ、当該事案では転勤命令が有効となる可能性が高いか、あるいは無効となりそうか等を判断していく必要があるのです。